浅丘ルリ子という女優の真価が遺憾なく発揮された作品といえば、巨匠・山田洋次監督による『男はつらいよ』シリーズを外すことはできない。彼女が演じた「リリー」こと松岡清子は、シリーズを通じて最も人気の高いマドンナとして、今なお語り継がれている。
意地っ張りで傷つきやすく、けれど誰よりも情に厚いリリー。山田洋次監督は、彼女の中に眠る一本筋の通った強さと脆さを見抜き、その魅力を余すところなく引き出した。寅さんとの掛け合いは単なる喜劇の枠を超え、観る者の涙を誘う上質なヒロインドラマへと昇華された。
「リリーは自分自身そのものだった」と後に振り返るほど、役に命を吹き込んだ。スクリーンの中で生き生きと命を宿したあのヒューマンドラマの裏側には、監督と女優による妥協なき芸術的対話が存在したのだ。