骨盤の底には、子宮・膀胱・直腸といった臓器を下からハンモックのように支える筋肉や腱、靭帯の複合体である骨盤底筋群が存在します。子宮が降りてくる直接的な原因は、このハンモック構造が物理的に傷ついたり、加齢に伴って弾力性を失ったりすることにあります。
発症要因として最も影響が大きいのが「妊娠と出産」です。胎児の重みや分娩時に産道が限界まで広がることで、骨盤底筋や臓器を骨盤に固定している基靭帯が引き伸ばされ、微小な断裂が生じます。特に巨大児の出産、吸引分娩や鉗子分娩、長時間の難産を経験した女性はリスクが高まる傾向にあります。
「産後に子宮が下がる感覚があるが、自然に戻るのか」という疑問を抱く産婦は多く存在します。産後数週間から数ヶ月の間に感じる軽度の下垂感は、産褥期のホルモンバランスの回復と筋力の自然治癒によって元の状態近くまで戻ることが一般的です。しかし、靭帯そのものが完全に断裂・弛緩してしまった場合、産後すぐには表面化しなくとも、数十年後に症状が顕在化する土台となってしまいます。
そして決定打となるのが「更年期以降の女性ホルモン(エストロゲン)の激減」です。エストロゲンには筋肉やコラーゲン線維のハリと弾力を保つ働きがあるため、閉経を迎えると骨盤底の支持組織が一気に脆弱化します。これに加えて、日常的な慢性の便秘による強いいきみ、肥満による腹圧の増加、重い荷物を持つ肉体労働、喘息や喫煙による慢性的な咳などが継続的に加わることで、支えを失った臓器が重力に従って押し出されていくのです。