大谷直子の人生を語る上で避けて通れないのが、2007年に発覚した悪性リンパ腫(ステージ4)との壮絶な闘いである。余命宣告に近い過酷な状況から、彼女は奇跡的な生還を果たした。抗がん剤治療の苦しみ、抜け落ちる髪、女優としての未来が途絶えかけた恐怖。その極限状態を間近で支えたのが、子どもたちだった。
病室で母の手を握り、過剰な励ましではなく普段通りの日常を持ち込んだ長男の存在は、大谷にとって何物にも代えがたい精神の錨となったに違いない。病を乗り越えた大谷は後に、家族の支えがいかに自分の生命力を呼び覚ましたかを著書やインタビューで静かに振り返っている。アナウンサーという華美な肩書きなどなくとも、母の命の危機に寄り添った息子の存在は、誰よりも確かなものだった。