フェードカット最大の難点は、その寿命の短さにある。刈り上げた部分が2ミリ伸びるだけで、あの息を呑むようなグラデーションは輪郭を失い、単なる伸びかけの坊主頭へと退行してしまう。美しさを維持するためには、最低でも2週間に一度、人によっては10日に一度のメンテナンスが欠かせない。
これを「面倒なコスト」と捉えるか、「自分を研ぎ澄ますための投資」と捉えるか。現代のフェード愛好者たちは明らかに後者だ。ジムで筋肉を追い込むように、スケジュール帳にバーバーの予約を固定する。定期的に身だしなみをリセットするその行為自体が、混沌としたビジネス環境を生き抜く男たちのメンタルヘルスを保つアンカー(錨)として機能しているのだ。