WebメディアやSNS動画の普及に伴い、肩の痛みやインナーマッスルの鍛え方に関する情報は溢れ返っています。しかし、その中には機能解剖学の観点から見て極めて危険な俗説や誤解が紛れ込んでいるのが実情です。現場の臨床データを踏まえ、代表的な2つの誤解を是正します。
誤解1:「肩の奥が痛いなら、ダンベルやチューブでとにかく外旋運動を繰り返すべき」
これは、腱板炎やインピンジメントを抱える人が最も陥りやすい罠です。すでに炎症を起こして滑走性が失われている棘下筋に対して、高負荷の外旋運動を課すと、脆弱化した大結節付着部に過剰な摩擦と剪断力が加わり、腱板の変性を一気に加速させます。さらに、棘下筋が正しく機能していない状態で外旋を試みると、僧帽筋上部や三角筋後部が過剰に代償収縮を起こし、結果として肩関節のすくみ(Shrugging)を助長してインピンジメントを悪化させる悪循環に陥ります。
誤解2:「肩が凝り固まっているときは、反動をつけて強く伸ばせばほぐれる」
関節包が拘縮した五十肩の急性期や凍結期に、壁に手を当てて無理やり身体をねじったり、強い反動をつけたストレッチを行ったりすると、関節包の微細断裂や防御性筋スパズム(痛みに反応して筋肉がさらに硬縮する反射)を誘発します。筋肉の線維走行と関節包の硬さを評価しない暴力的なストレッチは、可動域を広げるどころか拘縮期間をいたずらに長期化させる原因にしかなりません。
正確なアプローチには、まず棘下筋の触診と理学療法アプローチによる現状の精査が欠かせません。理学療法士は、肩甲棘の外側縁から指2本分下のくぼみに触れ、自動運動と他動運動での筋緊張の変化、腱付着部の圧痛、内旋可動域(2nd内旋)の左右差をミリ単位で観察します。自己判断での強引な運動療法は百害あって一利なしであることを銘記すべきです。