本殿前に据えられた巨大な茅の輪。参拝者たちは、神職の先導や掲示された作法に従い、左回り、右回り、左回りと「8の字」を描くようにくぐり抜けていく。猛暑と疫病に倒れる者が多かった古代、草木の生命力をその身に宿し、目に見えない禍々しい力を払いのけようとした先人たちの知恵だ。
「この輪をくぐると、身体の芯に溜まっていた重たいものがすっと抜ける気がするんです」。毎年家族で訪れるという地元桜井市の男性は、汗を拭いながらそう語った。手渡される白名代(しろなしろ)と呼ばれる紙の人形で体を撫で、息を三度吹きかける。自らの分身となった紙が祓い清められる瞬間、人々は無意識のうちに己の内面と向き合い、明日を生きる活力を取り戻している。