「エメラルドグリーンとして買ったリネンシャツが、室内灯の下で見たら完全にターコイズブルーだった」「WebサイトのCTAボタンをターコイズに指定したはずが、クライアントから『緑すぎる』と差し戻された」――知恵袋やSNS、デザインコミュニティでは、このような色の誤認に関する嘆きが日常的に交わされています。
なぜここまで現場での認識齟齬が起きるのでしょうか。アパレル製品やインテリア資材の流通現場を取材すると、日本国内の市販品における「表記の揺らぎ」が浮き彫りになります。大手量販店やファストファッションの現場では、正確なJIS規格に則ったカラーマネジメントを行っている企業ばかりではありません。バイヤーや商品企画担当者が「南国のリゾートっぽい爽やかな青緑」を一括りに「エメラルド」とラベリングして販売するケースが過去数十年にわたり常態化していた実態があります。
さらに、スマートフォンのディスプレイ技術(有機EL)の普及も錯覚に拍車をかけています。広色域表示(Display P3など)に対応した最新端末は青やシアンの発色が非常に鮮やかであるため、本来は落ち着いたグリーンであるはずの画像が、視覚的に鮮明なターコイズ寄りに補正されて映し出されてしまうのです。こうした物理的・デジタル的な環境差が、消費者の「色の思い込み」と実物のギャップを生み出す土壌となっています。