水と過酸化水素の最大の違いは、分子を構成する原子の比率と配置にあります。安定した水分子が水素原子2個と酸素原子1個(H2O)で共有結合を形成しているのに対し、過酸化水素は水素原子2個と酸素原子2個(H2O2)で結ばれています。
分子構造を深く理解する鍵は、過酸化水素の電子式と構造式にあります。構造式で表すと「H-O-O-H」となり、中央に酸素原子同士が直接結びついた「ペルオキシ構造(-O-O-)」を抱えています。電子式で見ると、各酸素原子は2組の非共有電子対(孤立電子対)を抱えながら、中心で互いに1組の電子対を共有して単結合を形成しています。
この過酸化物結合の特徴こそが、物質の運命を決定づけています。電気陰性度の高い酸素原子同士が単結合で並ぶと、互いの非共有電子対が強く反発し合います。さらに立体配置としても直線ではなく、本を少し開いたような約111.5度の二面角(気体時)を持つ折れ線構造をとるため、分子全体に歪みが生じます。
分子量に目を向けると、水(H2O)が約18.015であるのに対し、過酸化水素の分子量は34.014となります。酸素原子が1つ加わっただけで分子量はほぼ倍増し、沸点は150.2℃(純品換算)と水よりも高くなります。しかし、結合エネルギーの観点から見ると、O-O単結合の結合エネルギーは約142 kJ/molと、極めて切れやすい脆い結合です。酸素原子同士が「早く手を切って、より安定な水分子(H2O)と酸素分子(O2)へ移りたい」という強い熱力学的推進力を持つため、過酸化水素は本質的に不安定な性質を帯びています。