その美貌に最も深く、狂気的なまでに魅了されたのが作家・三島由紀夫だった。銀巴里の片隅に現れた三島は、若き日の美輪を一目見るなり雷に打たれたような衝撃を受ける。後に三島が彼を評して放った「天上界の美」という言葉は、誇張でも社交辞令でもない。完璧主義の文学者が追い求めた究極の審美が、肉体を持ってそこに実在していたのだ。
1968年、寺山修司が脚色した舞台『黒蜥蜴』において、美輪は稀代の女盗賊・黒蜥蜴を演じ、三島はその美に跪く愛人役として舞台上に立った。二人が交わしたあまりにも美しく退廃的な口づけは、昭和の演劇史に消えない烙印を押す。美輪にとって三島は知の巨星であり、三島にとって美輪は自らの肉体コンプレックスを鏡のように照らし出す、美の絶対君主だった。互いの精神の骨肉を削り合うような交情は、三島の自決という悲劇的な幕切れまで濃密に続いていく。