昨今の老年医学において極めて重視されているのが、高齢者の認知症発症・悪化リスクとの関連です。アセチルコリンは脳内で記憶や学習、集中力を司る重要な物質でもあります。抗コリン薬が血液脳関門を通過して中枢神経に届くと、物忘れの悪化、せん妄、見当識障害などを誘発することが判明してきました。
海外の大規模コホート研究や最新の国内データにおいても、強力な抗コリン作用を持つ薬剤を長期間累積して服用している高齢者は、非服用者と比べて認知症発症リスクが有意に高いことが報告されています。このため2026年現在の臨床現場では、患者が服用しているすべての薬剤の抗コリン負荷を点数化する抗コリンリスクスケール(ARS)を活用し、より中枢移行性の低い薬剤への切り替えや減薬(デプレスクライビング)を推進する動きが標準化しつつあります。