インターネット上のQ&AサイトやSNSでは、「戸籍が読めなければ発行した役所に持っていけば全部読んで教えてくれる」という書き込みが散見される。しかし、これは半分正しく、半分は危険な誤解である。
全国各地の市区町村における市民課・戸籍住民課の現場取材によると、自治体窓口のスタンスは明確だ。「窓口職員には戸籍を解読・翻訳・解説する法的義務はない」というのが制度上の冷徹な原則である。窓口の本来業務は、あくまで公簿に記録された内容を謄本として正確に交付することであり、古文書の読解サービス窓口ではない。
もちろん、現場の職員に「この部分の漢字がどうしても読めないのですが」と1、2箇所を尋ねれば、ベテラン職員が長年の知見から「これは『死亡』のくずしですね」「『大正六年』と書かれています」と親切に教えてくれるケースは多い。しかし、数十ページに及ぶ除籍謄本を持ち込んで「最初から最後まで全部読んで関係図を作ってほしい」と要求するのは完全に業務範囲外であり、混雑時でなくとも断られるのが通例だ。
公務員として私的な法律判断や相続関係の確定に関与することは、弁護士法や司法書士法などの業法抵触リスクを伴う。役所の親切心に甘え切ることはできず、一定の境界線を理解しておく必要がある。