「自分は4時間眠ればすっきり起きられる体質だ」と思い込んでいる人は少なくありません。しかし、睡眠医学の専門医や国内外の疫学データは、その認識に対して極めて厳しい警告を発しています。いわゆるショートスリーパーの特徴として語られる「目覚めの良さ」や「日中のハイテンション」の多くは、身体がアドレナリンやコルチゾールといった興奮性ホルモンを過剰分泌して無理やり覚醒を維持しているだけの「空元気」に過ぎないケースが目立ちます。
大手IT企業でプロジェクトマネージャーを務める30代男性の証言は、この錯覚の危うさを象徴しています。「繁忙期に『4時間睡眠で十分動ける』と自負し、半年ほど激務をこなしていました。ところがある朝、通勤電車のホームで突如として意識が一瞬途切れ、足を踏み外しそうになったのです。慌てて専門外来を受診したところ、重度の睡眠障害と診断され、医師から『脳が眠気を検知するセンサー自体が焼き切れている』と告げられました」。
このように、睡眠不足が極限に達すると、脳は防衛本能として「自分が眠い」というシグナルそのものを感じにくくさせます。この自覚症状の消失こそが睡眠時間4時間の危険性における最大の罠です。本人が「絶好調」と感じている背後で、思考の柔軟性や感情のコントロール力、免疫機能は音を立てて崩れ去っています。