算数のテストで図形問題を見た瞬間、記載されている数値をすべて使いたくなる衝動に駆られる子どもは非常に多く見られます。特に平行四辺形の図に「底辺6cm、斜めの辺5cm、高さ4cm」と書かれていた場合、迷わず「6×5=30」と計算して失点するケースが平行四辺形の面積公式の決定的な落とし穴です。
斜めの辺を掛けてはいけない本質的な理由は、図形の物理的な変形をイメージすると明白になります。4本の割り箸を長方形の形にピンで留めた枠組みを想像してみてください。この長方形を横から手で押してグニャリと押し潰していくと、辺の長さ(割り箸自体の長さ)は1ミリも変わらないにもかかわらず、枠の内側の空間(面積)はどんどん狭くなり、最後には完全に重なって面積がゼロになります。
もしも「底辺×斜めの辺」で面積が決まるのだとすれば、どれほど横にペチャンコに押し潰しても面積は変わらないという致命的な矛盾が生じます。図形が傾けば傾くほど、天井と床の距離である「垂直な高さ」が低くなり、それと完全に比例して内部の広さも失われます。だからこそ、計算に採用すべき数値は斜めの長さではなく、底辺に対して直角をなす高さでなければならないのです。
これを数学的に裏付けるのが、平行四辺形の面積公式の証明として古くから教えられている「等積変形」です。平行四辺形の片方の頂点から底辺へ垂直に線を下ろすと、直角三角形が1つ切り取れます。この切り取った三角形を反対側の端へスライドさせてピタリと貼り合わせると、合同な長方形が完成します。長方形の面積は「たて×横」ですから、横の長さである「底辺」と、たての長さである「高さ」を掛け合わせる平行四辺形の面積の求め方が完全に成立します。