家制度が廃止された現在、婚姻や独立に伴う分家の戸籍手続きという行政手続きは存在しません。現行の戸籍法では、1組の夫婦と未婚の子どもをひとつの単位として戸籍を編製します。子どもが結婚すると親の戸籍から自動的に抜け、配偶者とともに「新戸籍」を作成しますが、これを現代の日常会話で便宜上「分家した」と表現する人がいるに過ぎず、役所の窓口で分家届を提出するわけではありません。
多くの相談現場で最も深刻な摩擦となるのが、分家と遺産相続権の関係です。旧民法下の家督相続を「伝統」として盲信する一部の親族の間では、「分家に出た者は親の遺産を辞退するのが筋」「本家を継ぐ長男が土地も預貯金もすべて受け継ぐべきだ」といった主張が今なお見られます。しかし、現行民法第896条および第900条の規定に基づき、被相続人(亡くなった親)の子どもは長男・次男・長女を問わず全員が均等な法定相続分を有します。本家か分家かという事実は、相続権の優劣や取り分に1ミリも影響を与えません。
また、分家と名字・苗字の扱いに関しても誤解が散見されます。歴史的に分家が本家と同じ名字を名乗るケースが標準的であったため、「分家したら名字を変えなければならないのか」「同じ名字を名乗り続けると本家に迷惑がかかるのか」といった懸念を抱く人がいます。日本の法制度上、婚姻時を除いて個人の名字を恣意的に改姓することは原則認められておらず、本家と同じ名字を継承して名乗ることに何ら法的な瑕疵はありません。