ネット上の掲示板やSNS、知恵袋の投稿を分析すると、体言止めの誤用に対する一般読者のストレスが浮き彫りになります。「体言止めを連発するビジネスメールの送り手は偉そうで不快」「最近のネット記事は体言止めばかりでポエムを読まされているようだ」という手厳しい意見が目立ちます。
筆者が担当する大手Webメディアの校閲デスクでも、新人記者が提出した原稿を差し戻す最大の要因が「体言止めの暴走」です。ある取材原稿では、次のような文章が提出されました。
「会見場に現れた容疑者の険しい表情。背後に漂う異様な緊張感。無数に焚かれるカメラのフラッシュ」
このように体言止めを3回以上連続で使用すると、認知心理学における「意味飽和」やリズムのゲシュタルト崩壊が発生します。読者の視線は文末の名詞で何度も急ブレーキをかけられるため、文章をスムーズに読み進めることができず、多大な認知的負荷を強いられます。情景を伝えたいという書き手の自己陶酔(ナルシシズム)ばかりが透けて見え、ジャーナリズムとしての客観的な信頼性は失われてしまいます。