これほどの労力を払って建築設備士を取得した先には、どのような見返りがあるのでしょうか。厚生労働省の賃金構造基本統計や建設業界各社の求人動向を総合すると、建築設備士保持者の平均年収は約550万〜700万円が相場となっており、大手ゼネコンや組織設計事務所に勤務するシニアクラスでは800万〜1,000万円を超える事例も珍しくありません。
資格手当としても月額1万円〜3万円程度を支給する企業が多く、生涯賃金の押し上げに確実に寄与します。しかし、年収以上の恩恵は「法的な独占領域とキャリアのレバレッジ」にあります。
- 建築士法に基づく「意見の聴取」権限:延べ面積2,000㎡を超える建築物の設備設計・工事監理を行う際、建築士は建築設備士の意見を聴くよう努めなければならない(建築士法第20条の3)。この法定規定により、意匠設計者に対する強力なアドバイザリー権限を持ちます。
- 一級建築士の受験資格短縮・免除ルート:建築設備士として実務経験を積むことで、建築士資格を持たない設備出身者でも一級建築士への受験資格を得られる道が開かれます。
- 設備設計一級建築士への最短ルート:建築設備士取得後、一級建築士に合格すれば、修了考査の一部免除等を経て最上位の「設備設計一級建築士」へ駆け上がる最短チケットとなります。
さらに公共工事の入札に関わる「経営事項審査(経審)」においても、技術力評価において1人あたり高得点(1点)が加点されるため、サブコンや設計事務所からの採用ニーズは常に引き手あまたの状態が続いています。