井上陽水が最後に大規模な全国ツアーを行ったのは、2019年のデビュー50周年記念ツアーでした。全国各地を巡り、衰えを知らない艶やかな美声を響かせてファンを熱狂させたものの、翌2026年春に予定されていた追加公演が新型コロナウイルスの感染拡大によって全公演中止を余儀なくされました。
この公演中止を契機に、彼は表舞台でのライブ活動から一旦距離を置くことになります。もともと陽水は「気分が乗らないときは無理に歌わない」「自分のペースを何よりも優先する」という飄々としたスタンスで知られるアーティストです。長年第一線で走り続けてきた彼にとって、コロナ禍による一時的な活動停止は、奇しくも立ち止まるための自然なきっかけとなりました。
現在に至るまで事務所から「引退」に関する公式発表は一切なされていません。楽曲管理や過去のアーカイブ配信、映像作品のリリースなどは継続して行われており、本人の意思としては「引退した」というよりも「歌いたい衝動が湧くまでお休みしている」という状態が正確な表現と言えます。