映画を二度見ると、緻密に配置された伏線の数々に驚かされる。特に印象的なのが、劇中で何度も登場する「赤いスカーフ」だ。冒頭で紗江が身につけていたこのスカーフは、中盤で遺体発見現場の近くからも見つかる。
しかし、よく見ると刺繍の位置が微妙に異なる。これは、遺体が別人のものであることを示す決定的な証拠だったのだ。さらに、木下が訪ねた老婦人が何気なく口にした「あの娘は左利きだった」という言葉。物語後半、偽装された紗江(現在の彼女)が右手でペンを持つシーンがあり、ここで観客は「彼女が本物ではない」という違和感を抱く仕組みになっている。視覚と聴覚を使った極めて映画的なトリックだ。