SNSやカラオケ愛好家の間でも「ミセスの楽曲の中で一番難しい」「息が持たない」と評されることが多い本作。その難しさの背景には、単なる音域の広さだけにとどまらない3つの音楽的構造が存在します。
第1の理由は、地声と裏声(ファルセット)の瞬間的な切り替えです。サビでは力強い中高音(hiA〜hiB付近)を張り上げた直後に、柔らかな裏声へと瞬時に移行するフレーズが頻出します。喉の筋肉を柔軟かつ精密にコントロールできなければ、声がひっくり返ったりピッチがぶれたりする原因になります。
第2の理由は、急激な音程の跳躍です。メロディが階段状に上がるのではなく、1オクターブ近く一気に跳ね上がる箇所が複数配置されています。助走なしで高音を正確に当てるピッチの精度と、声帯を一瞬で締める瞬発力が試されます。
第3の理由は、終盤に待ち受ける転調(キーチェンジ)です。楽曲のクライマックスであるラストサビに向けて半音上に転調し、全体の音域がさらに引き上げられます。すでにスタミナを消耗した終盤で最高潮のエネルギーを要求される設計が、歌い手の体力を容赦なく削っていきます。