「ウィーン風」と名乗りながら、実はオーストリアのウィーン現地のカフェで「ウインナーコーヒー」と注文しても店員には通じません。「ウインナーコーヒー」という呼び名そのものは、日本独自に定着した和製英語に近い表現だからです。
本場ウィーンで日本のウインナーコーヒーに該当する伝統的メニューは、「アインシュペナー(Einspänner)」と呼ばれています。アインシュペナーとはドイツ語で「一頭立ての馬車」を指す言葉です。19世紀のウィーンにおいて、客を乗せて街を駆ける辻馬車の御者(ぎょしゃ)たちが好んで飲んでいたスタイルが原型となっています。
現在でもウィーンの老舗カフェでは、取っ手付きの細長いガラス製グラスにダブルのモカ(濃いエスプレッソ)を注ぎ、その上から山盛りの生クリームを浮かべて提供されます。日本の純喫茶で陶器のカップに注がれるスタイルとは器の佇まいこそ異なるものの、受け継がれているスピリットは今も色褪せていません。