気候工学が「禁断の果実」と呼ばれる最大の理由は、局所的な実験では決して予測できない地球規模の副作用が存在するためです。特にSRM技術には、人類社会を根底から揺るがしかねない重大な危険性が潜んでいます。
第一のリスクは、地球規模での降雨パターンの激変です。太陽光を遮ることで地表の蒸発散量が減少し、アジアやアフリカのモンスーン循環が乱れ、広範囲で壊滅的な干ばつや農業被害を引き起こす可能性が気象モデルにより指摘されています。
第二の恐怖が、一度開始した散布を何らかの理由で突然中断した際に発生する「終了ショック(Termination Shock)」です。温室効果ガスの大気中濃度が高い状態のまま日傘を取り払うと、蓄積されていた熱が一気に地表を襲い、わずか数年のうちに数度単位の急激な温暖化が発生します。これによる生態系や人間社会への打撃は、緩やかな温暖化をはるかに凌駕します。
さらに見過ごせないのが「モラルハザード(倫理的怠慢)」の問題です。「技術で冷やせるなら排出削減を急ぐ必要はない」という口実を与え、化石燃料依存からの脱却を遅らせてしまう懸念が国際社会から強く突きつけられています。