彼が役者としてひとつの到達点を示したのが、映画『春に散る』だ。ボクサー役に挑むにあたり、彼は形式的なトレーニングにとどまらず、実際にプロボクシングのC級ライセンスを取得するまでに自身を追い込んだ。
過酷な減量と日々の激しいトレーニングによって削ぎ落とされた肉体。拳を交えるシーンで見せた腫れ上がった目元や荒い吐息は、従来のスタイリッシュな面影を微塵も残していなかった。日本映画界において、ビジュアルの美しさを二の次にして作品の熱量に殉じる姿勢は、単なるルックス重視の俳優から本格派への明確な脱皮を告げるものだった。