歯科検診で「虫歯ゼロ」と診断された直後に激痛に襲われると、「誤診ではないか」「一体なぜ痛むのか」と混乱する読者も少なくありません。しかし、口腔内および顔面部には無数の神経や血管、筋肉が複雑に張り巡らされており、歯以外の部位で発生した異常信号が、脳で「歯の痛み」として誤認(錯誤痛・関連痛)されるメカニズムが医学的に解明されています。
代表的な非歯原性歯痛の原因は、大きく以下の3つの系統に分類されます。
1つ目は神経性・血管性の疾患です。顔面の感覚を司る三叉神経が血管に圧迫されて起こる「三叉神経痛」や、目の奥から上顎にかけて突き刺すような激痛が走る「群発頭痛」では、電撃が走るような激痛が特定の歯に集中して自覚されるケースが多発します。
2つ目は隣接器官(耳鼻咽喉領域)の炎症です。鼻の奥にある副鼻腔(上顎洞)に膿が溜まる「急性上顎洞炎(副鼻腔炎)」を発症すると、上顎洞の底部と上奥歯の根尖部が極めて近接しているため、上の奥歯全体がズキズキと激しく痛みます。
3つ目は心臓疾患に伴う放散痛です。狭心症や心筋梗塞の発作時、心臓からの痛みのシグナルが神経経路の混線によって左側の顎や歯の激痛として現れることがあり、これは一刻を争う危険なサインです。