2026年春、大瀧詠一のカタログがDolby Atmos(空間オーディオ)で一挙に配信開始された。その中でも『幸せな結末』の臨場感は群を抜いている。ヘッドホンを装着した瞬間、まるで1997年のスタジオの真ん中に放り込まれたかのような錯覚に陥る。アコースティックギターのきらびやかなストローク、背後で優しく語りかけるストリングス、そして耳元で囁くような大瀧のボーカル。この立体的な音響体験が、スマホとイヤホンで音楽を消費する現代の若者にとって、新鮮な衝撃となったことは想像に難くない。
音の壁(ウォール・オブ・サウンド)と称される大瀧のプロデュースワークは、モノラルやステレオの時代から常に「空間」を意識して作られていた。デジタル技術が彼の脳内にあった理想の響きにようやく追いついた、そう言っても過言ではないだろう。