ドーヴィル競馬場が世界屈指の競馬場と称される最大の理由は、その極めて贅沢かつ機能的なコースレイアウトにあります。トゥーク川のほとりに広がる敷地内には、伝統の芝コースに加え、フランスでいち早く導入されたオールウェザー(PSF)コースが併設されており、年間を通じて質の高い競走環境が維持されています。
最大の特徴は、高低差が極めて少ないフラットな芝1600mの完全直線コースです。欧州の主要競馬場(ロンシャンの偽直線やアスコットの過酷な起伏など)に比べると、一見トリッキーなアップダウンがないため「純粋なスピードと持続力」が問われる舞台と評されます。しかし、現地取材を重ねる調教師や騎手たちは口を揃えて「平坦だからこそ誤魔化しが一切利かない」と証言します。
ノルマンディー特有の重厚な洋芝は水分を含みやすく、天候急変によって馬場状態(ペネトロメーター数値)が劇的に変化します。さらに、英仏海峡から吹き込む強烈な海風が直線コースの向かい風・追い風となり、枠順(インコース・アウトコースの芝の荒れ具合)や位置取りの戦術に極めて複雑な駆け引きをもたらします。
2003年に新設された1周2000mのオールウェザー(PSF)コースは、厳冬期の平地競走を支えるインフラとして機能しており、芝コースの内側に整然とレイアウトされています。夏期フェスティバル期間中も芝競走とダート系競走が組み合わされ、多彩なカテゴリーのトップホースが日替わりでしのぎを削っています。