死亡説に対する決定的な反証となったのが、のちに映像化された『花物語(するがデビル)』の存在です。同作において、阿良々木暦たちが高校を卒業した後の春、主人公である神原駿河の前に現れたのは、肉まんを頬張りながら軽快に走る貝木泥舟その人でした。
ここで重要なのは作中の「時間軸(タイムライン)」です。『恋物語』の撫子救出劇が発生したのは高校3年生の2月であり、『花物語』の出来事は新学期が始まった4月以降の物語です。つまり、時系列において『花物語』は『恋物語』の明確な未来に位置しています。雪山で襲撃され頭部から血を流した男が、春にはピンピンして駿河の前に現れている事実こそ、彼が生還を果たした動かぬ証拠です。
なぜ重傷を負いながら助かったのか、その背後には怪異の元締めである臥煙伊豆湖(がえん いずこ)との関係性が深く絡んでいます。貝木泥舟は、臥煙伊豆湖を頂点とする大学時代のオカルト研究サークルの後輩にあたります。臥煙ネットワークの情報力や、怪異専門家としての危機管理能力、さらには神原駿河の亡き母・臥煙遠江(がえん とおえ)に対する彼なりの義理立てが、窮地を脱する手はずを整えさせたと考えられています。貝木は駿河に対し、走る姿を見せながら「怪我の功名」「身体を鍛え直すいい機会になった」と嘯いてみせ、自身のタフネスぶりを証明しました。