SNSやネット掲示板、Q&Aサイトを調査すると、「臭い玉の取り方」として綿棒、ピンセット、竹串、さらには口腔洗浄器(水流ジェット)を直接扁桃に噴射して自力で排出しようと試みる投稿が数多く見受けられます。「ポロッと取れて快感」「すっきりした」という体験談に誘われ、自分で取ろうとする人が後を絶ちません。
しかし、耳鼻咽喉科の臨床現場において、専門医が一様に警鐘を鳴らすのが「自力で取る行為の極めて高いリスク」です。綿棒が危険な理由として、以下の臨床的リスクが挙げられます。
扁桃の粘膜は非常に薄くデリケートで、無数の毛細血管が網の目のように走っています。鏡越しという不自由な視界で綿棒や器具を挿入すると、わずかな摩擦で粘膜が裂けて激しい出血を引き起こします。さらに、綿棒で押し込む圧力によって、かえって膿栓を陰窩のさらに奥深くへ押し込んでしまうケースが多発しています。傷口から口腔内の常在菌が侵入すれば、扁桃炎や扁桃周囲膿瘍(扁桃の周囲に膿が溜まり、激痛で食事が取れず窒息の恐れすらある重篤な疾患)へと悪化し、緊急入院や切開排膿を余儀なくされる事例も毎年報告されています。
本来、臭い玉には「自然に取れる経緯」が存在します。食事の際に食べ物が喉を通過する摩擦、大きなあくび、会話、咳やくしゃみをした際の気道内圧の上昇によって、成熟した膿栓は自然に陰窩から押し出され、大半は無自覚のまま胃の中へ嚥下(飲み込み)されるか、喀出されます。胃酸の酸性度は極めて高いため、飲み込んでしまっても胃酸で細菌は完全に殺菌され、健康被害が出ることは一切ありません。焦って粘膜を攻撃する必要は皆無なのです。