健康志向の波は、より本質的な方向へと舵を切った。単なるグルテンフリーの流行を一歩進め、現在マンハッタンで圧倒的な支持を集めるのは、数百年前の原種に近いヒトツブコムギ(アインコーン)やスペルト小麦を用いたロング・ファーメンテーション(長時間発酵)のサワードゥだ。
イースト・ヴィレッジに店舗を構える注目の工房では、ニューヨーク州アップステートの契約農家から毎朝直送される無農薬の全粒粉を自社製粉。30年以上受け継がれた野生酵母とともに72時間以上かけてじっくり発酵させる。外皮の香ばしい苦味と、水分をたっぷりと蓄えた気泡だらけの内皮。噛むほどに広がる複雑な酸味と甘みは、パン本来の滋味を思い出させてくれる。消化が良く胃にもたれないこの伝統製法のサワードゥは、毎日の主食として買い求めるローカル客で連日完売が続いている。