単なる塩揉みと「板ずり」の最大の違いは、繊維に対する摩擦と圧力の加わり方にある。まな板と手のひらで挟んでゴリゴリと転がすことで、表面の毛細構造が崩れ、塩分が均一に組織内へ浸透する。これにより細胞内の水分が適度に抜け、茹でた際の食感がだれずにシャキッとした歯触りが残る。
また、塩に含まれるナトリウムイオンは、ふきの緑色成分であるクロロフィルと結合して熱による変色を抑える働きを持つ。板ずりを怠ってそのまま茹でてしまうと、加熱によって茶褐色へと変色し、見た目の美しさが大きく損なわれてしまう。プロの料理人が決して板ずりの工程を省かない理由は、科学的にも極めて理に叶っている。