スポーツ漫画の歴史を見渡しても、日吉若ほど異色のフォームを持つ選手は極めて稀だ。実家の家元から受け継いだ古流武術の構えをコート上で体現する「演武テニス」は、直線的なパワーゲームが横行する現代テニスへのアンチテーゼとして強い存在感を放つ。
腰を低く落とし、相手の重心の偏りや打球の呼吸を一瞬で見抜く独特の踏み込み。集英社が刊行する原作コミックスやアニメで描かれるそのモーションは、観客の目を奪うダイナミズムと同時に、武道ならではの研ぎ澄まされた緊張感をもたらしている。伝統的な型とテニスの融合という奇抜な着想は、原作者・許斐剛の卓越した創造力とキャラクターメイキングの冴えを裏付ける好例だろう。