テレビや劇場のステージでスターとして輝いていたパンくんですが、2012年9月6日、衝撃的な出来事により突如として表舞台からの完全引退を余儀なくされました。
阿蘇カドリー・ドミニオンの公演終了後、舞台袖から控室へと戻る移動の際、パンくんが突如として実習生の女性飼育員に飛びかかり、顔や腰などを噛んで重傷を負わせる事故が発生したのです。被害に遭われた女性はドクターヘリで緊急搬送され、園は即座にショーを中止、警察や行政による調査が行われました。
この痛ましい事件の真相には、動物学的な観点から明確な理由が存在します。当時10歳を迎えていたパンくんは、チンパンジーとして人間で言えば思春期から青年期にあたる「性成熟期」に突入していました。チンパンジーのオスは成長とともに腕力が大人の人間の数倍に達し、群れの優位性を誇示しようとする本能的な攻撃性が急速に高まります。
衣服を着て人間社会に適応しているように見えても、彼らは本来極めて強い力と本能を持つ野生動物です。知能が高いがゆえに過密なスケジュールや環境変化によるストレスも蓄積していたと推測され、本能的な衝動を抑えきれなくなったことが事故の直接的な要因でした。この一件を受け、園側はパンくんを人間と直接接触させるショーやテレビ撮影から完全に引退させ、本来のチンパンジーらしい環境で余生を過ごさせる決断を下しました。