作中で描かれた「一巡」には明確に2つの段階が存在します。プッチ神父が目指した「未完成の一巡世界」と、神父の死によって生まれた「真の新しい世界(アイリンの世界)」です。
プッチ神父の理想は、全人類が未来に起きる出来事(自らの死期や幸不幸)をあらかじめ体験して知ることで、絶望を克服する「覚悟の境地=天国」を作ることでした。時の加速によって死亡した者の魂は一巡後の世界へ引き継がれず、外見や役割が似た「別の代理人」に置き換わります。これが、グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所でエンポリオが遭遇した、徐倫や承太郎の偽物の正体です。
なぜエンポリオだけが記憶を保持していたのか。その理由は、彼が一度も死ぬことなく、生きたまま肉体ごと宇宙の一巡を乗り越えた唯一の人間だったからです。プッチ神父は記憶保持者であるエンポリオを完全に抹殺しようとしますが、この慢心が最大の敗因となりました。
エンポリオは、徐倫から託された「ウェザー・リポートのスタンドDISC」を自らの頭部に挿入。部屋の酸素濃度を100%の純酸素に変えることで、加速能力ゆえに激しく呼吸せざるを得ないプッチ神父に酸素中毒を発症させました。「正義の道を行く者が真の覚悟を持つ」というウェザーの魂の力により、神父は無力化され完全粉砕されたのです。
プッチ神父が「一巡が完了するポイント(ケープ・カナベラル)」に到達する前に死亡したため、彼が構築した天国世界は完全に崩壊。結果として、プッチ神父という存在そのものが最初からいなかった歴史へと世界が書き換えられました。