まず楽曲のタイトルである「吾亦紅」は、一般的には「われもこう」と読みます。バラ科ワレモコウ属の多年草で、晩夏から秋にかけて赤褐色の小さな花を密集させて咲かせる野草です。「われもまた紅(あか)い」と静かに自己を主張するような佇まいから、花言葉には「変化」「もの思い」「愛慕」といった意味が込められています。
歌詞の中では、派手な大輪の花ではなく、秋の吹きすさぶ風の中でひっそりと揺れる吾亦紅の姿が、苦労の絶えなかった亡き母の生き様、そして親の愛に応えられなかった自らの不器用な半生と重ね合わされています。華美な言葉を削ぎ落とし、素朴な野の花にすべての感情を仮託した構成が、聴き手の記憶にある「それぞれの母親像」を鮮烈に呼び覚ますのです。