日本が生んだ世界的巨匠、北野武の歩みもまた、破壊と再生の連続であった。漫才ブームの頂点からテレビ界のトップへと君臨しながらも、バイク事故による重傷と顔面麻痺という、表現者として致命的とも言える災厄に見舞われた過去を持つ。世間が再起不能を囁くなか、彼は沈黙の期間を経て、研ぎ澄まされた死生観をフィルムへと焼き付けた。
ベネチア国際映画祭での金獅子賞受賞をはじめとする国際的評価は、テレビタレントとしての顔とは全く異なる、徹底的に純化された映画言語の賜物である。妥協なきバイオレンスと静寂のなかに宿る深いヒューマンドラマ。既存の映画産業の枠組みに縛られず、常に自らの表現領域を壊し続けてきたそのスタンスは、世界の映画人たちに今なお計り知れない影響を与え続けている。