NBAの歴史において、いまなおファンの間で語り草となっているのが「シリーズに敗れたチームからMVPが選ばれた唯一の事例」です。
賞が新設された1969年、ロサンゼルス・レイカーズとボストン・セルティックスが激突したファイナルは第7戦までもつれ込む大熱戦となりました。結果はセルティックスが108対106で勝利し優勝を飾ったものの、初代MVPに輝いたのは敗れたレイカーズのガード、ジェリー・ウェストでした。ウェストはこのシリーズ7試合で平均37.9得点、7.4アシストという超人的なスタッツを叩き出し、最終第7戦でも42得点・13リバウンド・12アシストのトリプルダブルを達成していました。
この歴史的選出をめぐり、インターネット上やSNSでは「第7戦が終了する前に投票用紙が集計され、レイカーズの勝利を見越して投票されたためミスが起きた」という俗説が長年囁かれてきました。しかし、当時の現地報道や関係者インタビューのアーカイブ検証によると、投票者たちは純粋に両チームを通じてジェリー・ウェストがコート上で最も卓越した存在であったことを認めて票を投じたことが記録されています。
これ以降、勝敗の重要性が再定義されたことで「原則として優勝チームから選出する」という不文律が定着しました。2015年にレブロン・ジェームズが敗戦チーム(キャバリアーズ)から驚異的なスタッツを残しながらも受賞を逃した際にも、この1969年のジェリー・ウェストの事例が改めて議論の俎上に載せられました。