豊橋技術科学大学を語る上で、まず是正しなければならないのが「偏差値のカラクリ」です。大手予備校が公表する河合塾等の一般入試偏差値データを見ると、豊橋技術科学大学の偏差値はおよそ45.0〜47.5前後に位置づけられています。この数字だけを切り取ると、大学受験生の一部からは「地方の標準的な国立工学部」と誤認されがちです。
しかし、この認識は決定的な前提を見落としています。同大学の入学定員のうち、高校普通科等から一般選抜を経て学部1年次に入学する学生は全体のわずか約20%に過ぎません。残る約80%は、全国の高等専門学校(高専)で5年間の高度な実践的工学教育を終えた3年次編入生で占められています。
高専の卒業生は、高校3年間と短大・大学前半2年分に相当する専門教育と実験・実習を徹底的に叩き込まれてきた工学のエリート層です。彼らが一般の大学入試センター試験や共通テストを受けずに編入してくるため、一般選抜の偏差値データは学内全体の学力レベルを一切反映していません。豊橋技術科学大学がすごい理由として教育関係者が真っ先に挙げるのは、まさにこの「高専卒の精鋭がマジョリティを形成している特殊な学内生態系」にあります。
さらに出口戦略においても、一般的な地方国立大学とはまったく異なる動向を示しています。豊橋技術科学大学の大学院進学率は、学部卒業生全体で毎年約75〜80%を推移しており、高専からの編入組に至ってはほぼ全員が修士課程(博士前期課程)へと進学します。つまり、学部偏差値で同大学を測ること自体が構造的なナンセンスであり、その本質は「高度な研究開発能力を備えた大学院大学」として評価されるべき教育機関なのです。