子ども向け絵本において「おばけ」と「お料理」は鉄板の人気モチーフですが、『おばけのホットケーキ』はその2つの掛け合わせが実に絶妙です。登場するおばけは決して人間を驚かせる存在ではなく、お腹をすかせて真夜中にこっそりおやつを作る、等身大で愛嬌のあるキャラクターとして描かれています。
物語を牽引するのは、料理のプロセスそのものが持つ心地よいリズムです。粉をふるい、卵と牛乳を混ぜ、フライパンに生地を落としてじっくり焼く――幼児期の子どもたちが日常生活で目にする「大人の真似をしたい」という欲求を、鮮やかな色彩とリズミカルな言葉で見事に満たしてくれます。焼き上がりの香ばしさが画面越しに伝わってくるような絵の力も、ページをめくる手を止めさせない大きな要因です。