事態の急激な悪化を受け、政府も重い腰を上げた。環境省はヒグマおよびツキノワグマを「指定管理鳥獣捕獲等事業」の対象に正式に追加し、国費を投入した捕獲・個体群管理を本格化させている。都道府県が主導する捕獲事業への財政支援が拡充され、個体数調整のピッチを上げようとする動きが加速する。
しかし、現場が抱える摩擦は根深い。林野庁が管轄する山林や林業の現場では、作業員の安全確保が死活問題となる一方で、森林環境の荒廃とクマの生息域拡大が複雑に絡み合う。さらに、人道的な保護や共存を訴える日本熊森協会などの自然保護団体からは、安易な駆除や捕獲強化に対して強い異論も投げかけられている。行政は、住民の命を守る防災・危機管理の鉄則と、野生生物の保護という倫理的ジレンマの狭間で、極めて難しい舵取りを迫られている。