ここで、来館前に絶対に知っておくべき「ネット上の誤解」を是正しておかなければなりません。検索エンジンのサジェストで「スラブ叙事詩」の文字を見て、「縦6メートル×横8メートルに及ぶ巨大な『スラブ叙事詩』のカンヴァス本画全20点が堺に常設展示されている」と誤認して訪れてしまう方が一定数存在します。
結論から申し上げますと、『スラブ叙事詩』の巨大な完成原画20点はチェコの国家遺産であり、所蔵先はプラハ国立美術館等です。堺にあるのは、その制作過程で描かれた貴重な油彩・パステル・素描による習作や下絵、そして現地取材時の写真資料です。
しかし、この事実を「本画がないからがっかり」と捉えるのは早計に失します。完成した本画そのものは世界的大巡回展などで一時的に来日することがあっても、画家の脳内試行錯誤がそのまま刻み込まれた下絵や、モデルに取らせたポーズの研究写真は、巡回展のスポットライトからは漏れがちです。巨大な歴史画を描き上げるためにミュシャがどれほどの精神的葛藤と学術的リサーチを積み重ねたのか、その舞台裏の息遣いを生々しく目撃できる場所こそが堺なのです。この文脈を理解して臨めば、展示の面白さは何倍にも膨れ上がります。
また、鑑賞後の楽しみであるミュージアムショップでは、堺アルフォンス・ミュシャ館オリジナルの図録をはじめ、所蔵作品を高精細に再現したポストカード、チケットホルダー、クリアファイルなどの限定グッズが手頃な価格で揃っています。巡回展のような法外なグッズ価格設定ではなく、日常に美を取り入れやすい価格帯である点も来館者から高く評価されています。