モンキー・パンチ氏の創作人生を語る上で欠かせないのが、テクノロジーに対する驚異的な探求心です。現在でこそ漫画のデジタル制作は当たり前となりましたが、氏はまだパーソナルコンピュータが一般的でなかった1980年代半ばから、いち早く制作現場への導入を進めていました。
当時、日本に輸入されたばかりのApple製「Macintosh」を導入し、解像度の粗い初期のビットマップペイントツールを使って試行錯誤を繰り返しました。高額な機材を惜しげもなく自費で購入し、アシスタントにも操作を学ばせる姿勢は、当時の漫画界からは「手描きの味を捨てるのか」「道楽に過ぎない」と冷笑されることすらありました。しかし、氏は「デジタルは修正が容易なだけでなく、人間の手では不可能な新しい質感や光の表現を生み出せる」と確信していたのです。
その探求心は趣味の領域をはるかに超え、2003年には66歳にして東京工科大学大学院メディア学研究科に入学。デジタルマンガ制作のワークフローや3DCGを活用したキャラクター表現について自ら論文を執筆し、修士号を取得しました。同大学の客員教授として教鞭を執り、後進のデジタルクリエイター育成にも多大な貢献を残しています。
一方で、近年の展覧会やモンキー・パンチ イラスト集などで公開されているアナログ時代の直筆原画は、世界中のアートコレクターや漫画愛好家から再評価を受けています。修正液(ホワイト)による迷いのない補正の跡、紙の凹凸を削るように走るペンの圧力、墨汁の濃淡が醸し出す立体感など、モンキー・パンチ 原画・直筆イラストにはデジタルでは再現できない生身の筆圧が宿っています。アナログの極致を知り尽くしていたからこそ、誰よりも早くデジタルの本質と限界を見抜いていたのです。