インターネット上の健康情報やSNSでは、医学的な根拠を欠いた俗説が散見されます。代表的な3つの誤解を正しく解体していきましょう。
誤解1:「心拍数が高い人は、必ず血圧も高くなっている」
これは明らかな誤りです。前述の通り、心拍数と血圧を司る受容体や神経伝達物質は複雑に分化しています。例えば、真夏に激しい発汗で脱水状態にあるとき、血液量が減るため血圧は急降下(低血圧)しますが、脳血流を保つために心拍数は110回/分以上の激しい頻脈になります。脈が速いからといって血圧が高いとは限らないのです。
誤解2:「降圧薬を飲めば心拍数も自然と下がる」
服用する薬の薬理作用によって、降圧薬と脈拍への影響は正反対に分かれます。
- カルシウム拮抗薬(アムロジピンなど):血管を急速に広げて血圧を下げるため、身体が反射的に心拍数を増やそうとします(反射性頻脈)。
- β遮断薬(ビソプロロールなど):交感神経の心臓への刺激を直接ブロックするため、血圧低下とともに心拍数も明確に減少します。
- ACE阻害薬・ARB:血管収縮物質の働きを抑えるため、心拍数にはほとんど直接的な影響を与えません。
薬の種類によって脈拍の推移がまったく異なるため、処方薬の特性を正しく主治医に確認しておく必要があります。
誤解3:「運動直後に血圧を測れば、本当の心臓の強さがわかる」
運動時と安静時の血圧測定は目的が根本的に異なります。運動直後は生理的に交感神経が極限まで高まり、上の血圧が180〜200mmHg近くまで一時的に跳ね上がるのが正常な生体反応です。家庭血圧の診断基準はあくまで「起床後1時間以内・排尿後・座って1〜2分安静にした状態」であり、運動直後の数値を日常管理の基準にしてはなりません。