直接の死因として診断された低血糖麻痺は、血液中の血糖値が異常に低下し、脳や重要な臓器へのエネルギー供給が断絶されることで引き起こされる。東京大学で医学を学んでいた彼自身、その危険性を誰よりも熟知していたはずだった。しかし、知識をもってしても抑えきれないほど、彼の美学と情熱は強烈だったのだ。
医学的視点から見れば、体脂肪とグリコーゲンが完全に枯渇した状態で急激な運動を続けることは、心肺停止や不整脈の発生リスクを跳ね上げる。北村の肉体は限界を超えて悲鳴を上げていたが、彼は脳からの警告信号をトレーニングの熱量で押し殺してしまった。低血糖によって意識障害に陥ったとき、体内のカリウムやナトリウムといった電解質バランスも崩壊していたと考えられており、病院へ搬送された時にはすでに救命が困難な状態に達していた。