『テセウスの船』を語る上で最大の論点となるのが、原作漫画とテレビドラマ版における犯人設定の差異です。講談社『モーニング』で連載された東元俊哉の原作コミックでは、真犯人はあくまで加藤みきおであり、田中正志は事件に関与するものの主導的な黒幕ではありませんでした。
TBSの制作陣は、原作既読のファンにも最後まで先の読めないサスペンス体験を提供するため、「ドラマオリジナル犯人」の構築を決断しました。以下の比較表は、原作とドラマ版における構造的な違いと反響を整理した客観的データです。
ドラマ版における田中正志の犯行動機は、過去に母親が起こしたとされる事件を巡り、佐野文吾によって一家が追い詰められ、離散と死に追いやられたという深い怨恨でした。正志の妹である佐々木紀子(芦名星)の苦しみも含め、一族の悲劇をすべて佐野文吾の傲慢さに帰結させた正志は、少年・みきおの歪んだ心理を利用して「文吾を最も苦しめる形での破滅」を周到に計画したのです。