北見敏之の名を全国のお茶の間に決定づけた作品といえば、テレビ朝日系の国民的刑事ドラマ『相棒』シリーズを外すことはできません。北見敏之は『相棒』において、異なるシーズンでそれぞれ別の重要なキーパーソンを演じ分けるという、特異な起用をされた希少な俳優のひとりです。
あるエピソードでは私服を肥やす警察組織の上層部、またある時は冷酷な策略で水谷豊演じる杉下右京を心理戦に引きずり込む政財界の怪人など、いずれも単なる「わかりやすい犯罪者」ではなく、独自の倫理観や論理で動く複雑な人間像を完璧に成立させました。右京とのタイトな会話劇において、視線の微細な揺らぎや薄い笑みで見せる心理の攻防は、『相棒』ファンの間でも語り草となっています。
もちろん『相棒』以外にも、北見敏之の出演ドラマは枚挙にいとまがありません。『科捜研の女』『警視庁・捜査一課長』『アンフェア』、さらには大河ドラマやNHKの社会派作品に至るまで、彼が配置されることでシーン全体のリアリティが格段に跳ね上がります。また、崔洋一監督をはじめとする映画界の鬼才たちからも愛され、数々の骨太な映画に出演。暴力と隣り合わせのアンダーグラウンドを描いた作品でも、静かな狂気をたたえた佇まいで映画ファンを唸らせてきました。