「無人在来線爆弾」という語感のインパクトと演出手法には、庵野秀明総監督が長年培ってきた映像文法と、日本の特撮・アニメーション史への深い敬意が凝縮されています。
最大の元ネタのひとつが、1954年の初代『ゴジラ』に対する鮮やかな逆転オマージュです。初代作品において、ゴジラは数寄屋橋付近で走ってきた国鉄の列車を口にくわえて破壊し、人間側の無力さと日常の崩壊を象徴する被害者として鉄道が描かれました。『シン・ゴジラ』ではその関係性を完全に逆転させ、「かつて怪獣に一方的に蹂躙された電車が、人間の知恵と意志を乗せて怪獣を討つ」という半世紀越しのリベンジ構造を成立させています。
また、庵野監督の代表作『新世紀エヴァンゲリオン』の「ヤシマ作戦」に見られるような、日本全国の電力を一点に集約する総力戦の美学や、明朝体テロップとともに突撃するケレン味あふれるカッティングはまさに真骨頂。「身近なテクノロジーの転用」がもたらすカタルシスは、アニメファンから一般層までを等しく熱狂させました。