『ファインディング・ニモ』の劇中で、わずか数秒前の出来事すら忘れてしまうドリー。単なるコミカルなキャラクター付けと思われがちですが、作中設定におけるドリーの記憶喪失の理由は「生まれつきの短期記憶障害(前向性健忘)」です。
この障害の真実と過去のドラマが深く掘り下げられたのが、2016年公開の続編『ファインディング・ドリー』でした。幼少期のドリー(ベビー・ドリー)は、自分が周囲と違うことに不安を抱えながらも、深い愛情を注ぐ両親(父親のチャーリーと母親のジェニー)に見守られて育ちました。両親は物忘れの激しいドリーが迷子にならないよう、家の周りに「貝殻の道標」を並べるなど、生きる術を根気強く教えていたのです。
しかし、ある日ドリーは激しい海流に流されて両親とはぐれてしまいます。自分の名前以外の記憶を次々と失い、何を探しているのかすら忘れたまま、何年ものあいだ広大な海をたった一人で彷徨い続けていました。あの底抜けの明るさの裏には、「一人ぼっちの孤独」と「何か大切なものを忘れてしまっている焦燥感」という、胸を締め付ける過去と裏設定が存在します。