ネット上の掲示板やSNSでは、日本代表の試合が近づくたびに「サッカー日本代表テレビ中継どこで見れるのか」「なぜ普通にテレビをつけても見られないのか」という混乱と不満の声が渦巻いています。その引き金となったのが、アジア最終予選におけるDAZNサッカー日本代表戦配信の有料独占でした。アウェー戦が地上波で一切放送されず、月額料金を支払わなければ応援すらできない現実に、ライト層を中心に強烈な疎外感が広がったのは記憶に新しいところです。
一方で、2026年カタール大会において、全64試合を無料生中継するという離れ業を演じたのがABEMAでした。サイバーエージェントの藤田晋社長が投じた資金は推定200億円とも言われ、高品質なマルチアングル映像や入場制限のないサーバーインフラは、国内外から絶大な賛辞を浴びました。この成功体験は、視聴者の中に「テレビが映らなくてもABEMAで見ればいい」という新たな常識を植え付けました。
しかし、メディア関係者の間ではABEMAワールドカップ無料生中継というモデルが今後も永続するとは考えられていません。巨額の放映権料を広告収入やプレミアム会員(有料プラン)の獲得だけで完全に回収することは至難の業であり、カタール大会における同社の決算でも多額の先行投資赤字が計上されました。配信プラットフォーム側もまた、「全試合完全無料」という大盤振る舞いから、「基本有料・一部注目試合のみ無料解放」というハイブリッド課金モデルへの転換を模索せざるを得ないのが現状です。
現場のファンが直面しているのは、単に「アプリをダウンロードすれば済む」という話ではありません。高齢者層を中心としたスマートテレビや配信アプリへのアクセス難民問題、さらには家族全員でリビングに集まって同じ画面を見るという共有体験の喪失です。視聴スタイルのデジタル化は利便性をもたらした反面、世代間の分断という新たな課題を浮き彫りにしています。