三木眞一郎の代表作として真っ先に名前が挙がるのが、『頭文字D』の主人公・藤原拓海だ。家業の豆腐配達で培った圧倒的なドライビングテクニックを持ちながら、普段はぼーっとした冴えない高校生。この「普段の脱力感」と「ハンドルを握った瞬間の凄み」のギャップを、三木は完璧なトーン変化で演じきった。
大声を張り上げるわけではない。むしろボソボソとした口調の中に、負けず嫌いな本性と冷徹な集中力を漂わせる。ダウンヒルを攻めるハチロクのエンジン音とともに響くその声は、当時のアニメファンに強い衝撃を与えた。公道最速伝説の幕開けを支えたのは、間違いなく三木の静かなる熱演だった。