東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)が走らせる中央線沿線には、中野、阿佐ヶ谷、荻窪と呑み屋街が連なるが、高円寺の放つ雰囲気は異質だ。かつてミュージシャンや劇団員、若き表現者たちが夜な夜な夢を語り明かした「中央線文化」の文脈が、今もなお酒場のカウンターに脈々と息づいている。
高円寺の大衆酒場は、単に酒と料理を提供するだけの場所ではない。肩を寄せ合い、見知らぬ同士が杯を交わす空間そのものがひとつの表現の場なのだ。古びたパイプ椅子、壁一面に貼られた黄色い品書き、ダクトから漏れる煙。そのすべてが調和し、この街ならではの美学を形作っている。