彼女のキャリアを振り返ると、ヘアスタイルは常に作品の「核」を担ってきた。日本アカデミー賞主演女優賞に輝いた映画『湯を沸かすほどの熱い愛』で見せた、飾らない日常感と力強さが漂うナチュラルスタイル。一方で、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で演じたりく(牧の方)の、気品と野望を孕んだ絢爛たるスタイリング。時代や役柄を超えて彼女が放つリアリティは、毛髪一本の揺れにまでこだわった造形美があってこそだ。
役作りにおける髪型は、単なる装飾ではない。演者の骨格や表情の癖を徹底的に分析し、照明の当たり方まで計算に入れてカットされる。画面に映し出される一瞬の静寂において、乱れた一筋の毛束がキャラクターの焦燥や情熱を饒舌に物語るのだ。